英語のmakeから考えた「つくる」の意味範囲の広さ
makeは「足らしめる」意味を持つ?
きっかけはこんな例文。
Custom is the most certain mistress of language, as the public stamp makes the current money. ――Ben Jonson
慣用こそは言語になくてはならない女主人である。ちょうど国家の刻印があって初めて貨幣が貨幣たり得るように。――ベン・ジョンソン
因みに上記は、「日本人の英語」マーク・ピーターセン著の56ページから。
- 作者:マーク・ピーターセン
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1988/04/20
- メディア: 新書
上の文を見て思ったのだが、makeには「~足らしめる」という意味があるらしい。
確かに、makeという動詞に対して一般に持っているイメージの「つくる」は「足らしめる」を内包している・・・と思った。
だが「足らしめる」は「その存在を支持する」という印象がある。「つくる」とは異なるような・・・とも思った。
では「つくる」と「支持する」は何が違うのだろうか?少し考えてみた。
「つくる」と「支持する」の違いとは?
「つくる」というと、その動作の前までは、対象物が存在していなかったように思われる。
つまり対象物がゼロの状態にあるところからイチの状態に持っていく過程を「つくる」と呼ぶのだと。
一方「支持する」とは、対象物は既に存在しており、そのものがそのものとして存在できるように支える、といったイメージだ。
ならば「足らしめる」において、対象物は既に存在しているのか?それとも存在していないのか?
応えは「存在していない」となる。先ほどの例文でいえば、国家の刻印なき貨幣は貨幣ではなく、ただの金属の塊に過ぎない。
なぜなら貨幣とは、人間の約束事の上で定義された概念であり、物理的な存在ではないからだ。
結論:「つくる」の意味範囲は意外と広い
一般に「つくる」とは、物理的な存在の有無を指していると思われているが、そうではなく、
「つくる」には物理的な存在のみならず、意味的な存在も含まれているといえるだろう。